コモド島観光は、例年1月から2月中旬頃にかけて海上状況が悪化し、海が大きくうねる時期にあたります。この時期、インドネシア気象庁(BMKG)の気象予報に基づき、ラブアンバジョ港の港湾当局から観光客船の航行禁止命令が発令されることが常態化しており、港からの出港自体が物理的に不可能な状況が発生します。
2026年においては、高波が断続的に続いたことに加え、コモド島方面の海域で複雑な潮流による渦潮が観測されるなど、気象条件が極めて不安定な状態が続きました。その結果、2月中旬まで航行停止措置が継続される事態となりました。
また、2025年12月26日夜には、パダール島付近で木造船(宿泊付ライブアボード)が転覆・沈没し、スペイン人家族4名が死亡する事故が発生しています。現地報道によれば、船は高波の中で沈没し、乗員・ガイドおよび家族の一部は救助されたものの、甚大な被害を招きました。こうした事故の背景もあり、2026年初頭は当局による安全基準の運用と出港許可の判断が例年以上に厳格化されました。

コモド諸島の気象条件の推移
コモド国立公園一帯は、12月から3月にかけて北西モンスーンの影響を強く受けます。特に1月から2月上旬は気圧配置の関係から、インド洋方面からの強い風と、それに伴ううねりが外洋から直接流れ込みます。コモド観光は、本拠地となるラブアンバジョから船舶で各島を巡る「海の旅」であることが前提であり、陸路での代替手段が存在しません。
観光の主要スポットであるパダール島、コモド島、リンチャ島、ピンクビーチ、マンタポイント等は、いずれもラブアンバジョから1時間以上の航行を必要とする場所に位置しています。波高が一定の基準(通常は2メートル以上)を超えると、港湾局はスピードボートを含むすべての観光用船舶に対して「出港許可証」の発行を停止します。
2026年2月の事例では、2月2日から2月4日まで出航許可の発行を完全に停止しました。現地旅行会社によれば、この停止措置は2025年末の事故直後から断続的に続いており、1月中に数日間の一時的な再開はあったものの、1月12日以降は再び厳しい制限が敷かれました。コモド国立公園側の公式発表でも、強風と4メートルから6メートルに達する高波を伴う悪天候が継続したため、2月1日まで観光閉鎖を延長したことが明示されています。
※例年はコモド島方面の航行は禁止されても、異なるコースのリンチャ島などへは立ち寄ることが可能でしたが、今年2026年に関してはリンチャ島方面へも航行が認められず完全にラブアンバジョ港から船を出すことができなくなっていました。2027年以降については何とも言えませんので補足しておきます。

一時は夜間航行も禁止に
1月~2月上旬に観光が推奨されない最大の理由は、安全性の確保が困難な点にあります。2025年12月末の沈没事故についてAP通信は、観光船がコモド島からパダール島へ向かう途中でエンジントラブルを起こし、高波の影響をまともに受けて沈没したと分析しています。当時の救助活動も、視界不良と悪天候により一時中断を余儀なくされるほどの状況だったそうです。
この事故を受け、インドネシア政府および地方当局は再発防止策として運航ルールの改定を実施しました。報道によれば、2026年1月10日の運航再開にあたり、港湾当局は観光船に対して「夜間航行の全面禁止」という条件を課しました(その後解除)。これは、視界が確保しにくい夜間の事故リスクを排除するための措置であり、当局が海上の安全性を極めて重く見ていることを示しています。
こうした規制下では、たとえ晴天であっても風や波の数値が基準を超えていれば、物理的に船を出すことはできません。「少しの雨なら大丈夫」という判断は通用せず、公的な規制によって旅行そのものがキャンセルされることになります。特に日本からの旅行者のように、限られた休暇の中でバリ島やジャカルタから国内線を乗り継いでくる場合、1日でも航行停止が発生すれば、旅程全体のリカバリーは極めて困難となります。
実際、今年の1月から2月にかけてラブアンバジョを訪れた方は明日再開されるのか分からない状態で滞在していたことになり、費用的負担も少なくありません。

ライブアボードは危険という声も
コモド観光で人気のある木造船(ピニシ船)を用いた「ライブアボード(船上宿泊)」は、この時期には特に高いリスクを伴います。ライブアボードは24時間海上に滞在することを前提としており、夜間の急激な天候悪化や風向の変化にさらされる時間が長くなります。
現地旅行会社の中には、数年前から事故が頻発していると注意喚起を行っていますが、船体構造が木造である場合、スピードボートと比較して喫水が深く安定感がある一方で、エンジントラブルや浸水時の対応には高度な操船技術と安全設備が求められます。当局が夜間航行を禁止した背景には、宿泊船であっても夜間は安全な場所に停泊し、移動を制限させる意図があります。

1月~2月上旬に渡航する場合には
どうしてもこの時期にコモド周辺を訪れる必要がある場合は、気象データに基づいた現実的な対応策を講じる必要があります。
まず、ラブアンバジョへの滞在日程を通常より長く設定し、予備日を確保することが必須です。3日間の滞在のうち、2日間が航行禁止となった場合でも、1日だけ天候が回復すれば上陸の機会を得られる可能性があるからです。ただし、これには宿泊費や航空券の変更リスクが伴います。
次に、情報の収集源を確定させることです。SNS等の過去の投稿や、ネット上の宣伝用画像は乾季の良好な状態に基づいていることが多いため、判断材料としては不十分です。インドネシア気象庁が発表する海域別の波高予報を正確に把握し、現地から最新情報を発信している旅行会社などの情報を入手するのが最も確実な判断基準となります。
さらに、万が一の欠航に備え、ラブアンバジョ市内や陸路で行けるミラー洞窟(Goa Cermin)などの代替観光プランを事前に準備しておくことが求められます。ただし、これらはコモド国立公園の島々を代替するものではないため、旅行の期待値を大幅に下げておく必要があります。

適切な渡航時期を選ぼう。旧正月はぎりぎりの時期
コモド島観光において、安全性と観光の質を両立させるためには、気象条件が安定する時期を選択することが不可欠です。モンスーンの影響が弱まり、海が落ち着くのは例年3月以降であり、4月から10月にかけての乾季がベストシーズンとなります。この時期は降雨が少なく、湿度が低いため景色も鮮明になり、海水の透明度も最高水準に達します。
1月から2月上旬は、航空運賃や宿泊施設が安価になる傾向にありますが、それは「航行禁止によるツアー中止のリスク」および「海上の安全性不足」という重大なデメリットと引き換えになっています。特に初めてコモドを訪れる旅行者にとって、目的の島へ上陸できず、港に留まることになる可能性が高いこの時期の計画は、合理的な選択とは言い難い面があります。
現地旅行会社に取材すると、お問い合わせ段階で既にご旅行を決めている方も多く、高波による欠航リスクを言っても、旅行自体が確定してしまっているという声がありました。そのため、計画段階でできる限りこの時期にはコモド島観光は控えた方が賢明だと考えます。
また、2月後半に旧正月があり、この休暇を利用してコモド島観光を訪れる方もいると思います。
2025年も2026年も旧正月は平常運航でした。ただ、どうしてもこの時期に旅行したいという気持ちは理解しますが、一度航行禁止となって全ツアーが欠航となった場合、翌日もさらに翌々日も欠航となり、ご旅行が台無しになってしまう可能性があるということは承知しておいた方が良いかもしれません。


